今展では、「扉」という立体の大作が一点、展示室中央にドカッと、いや静かに鎮座していた。作品の右肩から落ちた青色の光が、まるで夜の森の入口を呈示しているかに映った。ある者にとって、それは遮蔽物であり、その存在感は威圧さえ放っていた。しかし、ある者にとっては柔らかく森への扉としての機能をきちんと果たしていた。闇深き森への、それを故郷ととるか、夜の世界ととるか、はたまた置き忘れてきた世界ととるかは、見る者に委ねられていた。この作品展において感じられたことは、見る者殆どが、皆自分の内側の扉を開いて自分自身を確認していたように思えたことである。
作家は、彼自身の内側を立像として表現した。恐るべき深さと奥行きとを感じさせた展覧だった。
小島 靜ニ
（さかもと・たろう）
1970年 埼玉県に生まれる
1997年 国際瀧富士美術賞 受賞、愛知県立芸術大学美術学部卒業制作展 桑原賞受賞、愛知県立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻卒業
1999年 愛知県立芸術大学大学院修了制作展 買上賞受賞、愛知県立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2000年 愛知県立芸術大学修士課程修了
2002年 愛知教育文化財団 第13回助成賞受賞
2006年 ドイツ国際木彫シンポジウム「FLUR 2006」一等賞受賞
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