小柄な作家だが、巨大作品に体当たりした。展示室にぽっかりと空ができた。微妙な色のトーンが、各々の色の世界を重層的に作っており、見る者各人がそれぞれ別の世界に踏み込んでいった。一見、静かで穏やかな作品であるが、よく探すと、多くの種類の感情が散りばめられており、それらのその先を提示していることが、この作家の特徴であろう。

躯体からを自分で制作し、サイズも定型はなく、作品の厚みも各々異なり、特徴的なのは、前面から側面へと移行するエッジの処理の仕方である。エッジ処理に作家の熱が入りすぎるとモノ化してしまう恐れもある。

見る者たちは、恰も作品の中に浮遊しているように溶けていく時間をたのしんでいた。作家の透明な世界に辿り着きたいと願う澄んだ精神性を表現した展覧だった。


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